特定非営利活動法人法人 疾病管理・地域連携支援センター

~2015年の抱負~
高齢化した糖尿病患者の併存疾患にどう向き合うか

 糖尿病は基礎的身体条件であり、病的状態に陥っている場合もあれば、良好なコントロール代謝コントロールを維持し、病気といえない状態が続くよう願っております。糖尿病の罹病年数が伸び、患者が高齢化すると、糖尿病の合併症以外に、動脈硬化性疾患、慢性閉塞性肺疾患、骨・関節症状、など多くの問題を持つ人が増え、それに対する投薬も複雑化しているのが現況です。

 小生の診療所の電子カルテの処方作成欄では7種類以上の薬を処方しようとすると、コンピュータ様から、「7種以上だけど大丈夫ですか?」と問いかけの表示が出ます。しかし、同僚医師の中には、10種以上の薬を出している者も居て、患者さんが多数の診療科にかかっている場合、他科で糖尿病内科の処方内容に全く無関心で、さらに同系統の薬剤を積み重ねることもしばしばあります。さらに、数年前ある医学関連の新聞に「○○科の医師が治療する糖尿病」などというコラムを提供した製薬メーカーもあり、小さな糖尿病科外来での決定を無視するかのごとく平然と抗糖尿病薬を出す。出された患者は迷惑とは持っていないようで、通院回数が1回減ってありがたい、と思うこともあります。「糖尿の先生には申し訳ない」と思いながら、10種類以上の大量の薬を「こんなに飲んで大丈夫か」と思いながらそれを訴える先がないことも事実です。

 80歳以上になると、骨粗鬆症に加えて、脳卒中ばかりではなく単なる転倒などによる圧迫骨折のような外傷が加わる。胸焼けや胃痛で胃食道逆流症と診断され、プロトンポンプ阻害薬が追加され、不眠や欝に対し幾つもの精神安定薬が出るでしょう。わが国の健康保険制度下でも薬価への支出は老人の財布をおおいに圧迫します。さらに説明不能で我慢できない副作用や、無視できない相互作用が出現すると思います。「滅多にないことだ」と言われますが、お薬手帳を見ればわかる、とはいわれても、患者の中には薬局別にお薬手帳を持っている人も沢山います。病院の電子カルテは医療保険点数の請求には強いが、糖尿病のような年余のわたる長期経過を俯瞰するには不便です。不便だから、他科の先生が見てくれないのでしょう。高齢患者にとって何が良くて、何がよくないか、 よく考えるべきときです。一つの病気を単独に治療したら、もうひとつが悪化した。例えばHbA1cはよくなったが、別な問題が起こったということはないでしょうか。外科系でいえば「手術は成功したが、病状は悪化した」と言うのに似ています。

 このような例を「multiple chronic conditions」と呼びます。病的状態を一つづつ見るより、健康を自己管理できるようにするには、うつ状態からの開放が先であり、身体活動能力改善の方が重要ではないでしょうか。アメリカでは、現行の医療制度は個々の臓器と病気に対応しているが、多疾患状態(multimorbidities)に苦しむ患者の擁護者はいない、といいます。多疾患併存患者に対応する確固としたガイドラインがないので、臨床医家は、最良と思う方法を自分で裁量するでしょう。EBMを実践するにも地図はありません。10分足らずの診療時間の壁も問題です。では患者の欲求や主治医として勧める優先順位を考える暇もなく、医療費のことまで考えると、自らの決断を犠牲にしなければならないこともある、と言います。

 私はビグアナイド薬を推進してきた張本人です。ビグアナイド薬の悲劇は製剤を十把一絡げにしたことにあります。フェンホルミンの副作用で割を食ったのが他剤でした。当初は、調剤薬局の薬剤師から「先生!そんな高用量で大丈夫ですか」と言う電話があり、患者さんからは「薬剤師から、これは恐ろしい副作用のある薬だから注意してのむようにと、いわれたので、飲まないでいた」と言われたものです。そのとき、「休薬にすべきとき」を簡単に数行にして、毎回主治医、看護師、薬剤師が繰り返し伝えて、大事に至る症例を回避しました。副作用に際して、処方した医師の責任か、服用する患者のコンプライアンス不良か、をよく観察・検討することによって多薬を複雑に処方することから生じるMultimorbidityの問題を回避できると思います。この面については薬剤師の人たちの認識の方が医師より良好というと、同僚から叱られるかもしれませんが、不要な処方をする医師はいないと思いますので、薬を手渡すとき、何を「一言」とするか、診療側との密接な連携プレイが必要です。

 今年はこの辺りをテーマに勉強していきたいと思います。

2015年1月
NPO法人 疾病管理・地域医療支援センター理事長
松岡健平

 

組織概要へ戻る

入会のご案内

疾病管理・地域連携支援センターでは、個人・団体の方のご入会を募集しております。 下記よりお申し込みください。

個人
各種お問い合わせ